- 作者: 田中小実昌
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2004/09/04
- メディア: 文庫
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次の新幹線までに25分もあったので、駅の書店でなんとはなしに購入。
読み進むまで、エッセイだと思ってましたが、小説。
ごくごく平凡な一日を(それこそ、朝おきてから夜寝るまでを)切り取った、ドラマツルギー的には、ほぼ、無風で、起承転結でいうと「起」だけで終わっているような無為の極地の構成である。ゆるゆるとしたなんともいえない雰囲気で、それこそ車窓から風景を眺めているかのように、主人公は世界に介入しない。戦後の進駐軍支配下という状況が、このアパシーに妥当性を付与しているが、舞台を現代に引き写してきても、所詮我々はかの主人公と同じような生活をしているのかもしれない。気がつかないふりをしているだけだ。
まるで、「タイムクエイク」(カート・ヴォネガット・ジュニア)である。そういえば、自動巻き時計という題と「自動運転中のわが10年―キルゴア・トラウト」と、相通ずるものがあるな。タイムクエイクが鳥瞰的に眺めたものを虫瞰的にみればこうなる、というか。