少年カフカと同時に購入。前に話題になっていたので買ってみた。
まず、非常に淡々とした文体で、いわゆるベストセラーに求められるようなテンションの高さがまったくないことにちょっと驚く。啓蒙書につきもののいやらしさ、くどさはなく、むしろ白書などに近い形式のような印象を受けた。あとで、作者がもと大蔵省官僚の現在経済学部教授と知り、納得した。やっぱり、白書なのだ。
この本のポイントは一つ。
『高齢化社会』と我々はあっさりと一言で済ませているが、それがどういうことか、本当にわかってんのか!?ということ。
いくら少子化対策をしたところで(必要だとは思うが)今後の人口減少(正確には労働人口の極端な減少)は避けられない。(そして、それは今現在の我々に問題があるのではなく、戦後第一次ベビーブームが終わった後すぐ人口抑制政策をとった時点で、このレールは敷かれていたのだ。)この点を曖昧にしないで近未来予想図を構築すると……というのがこの本。
マクロで冷徹な視点ではあるが非常に説得力があるし、今まで漠然と感じられていたことがやはり間違ってはいないということが簡潔に証明されてゆく。読んでいて快感を感じるほどである。
こういう考え方は、いわゆる報道2001とかに出てくる政治家からはあんまり聞かれない。
官僚の本音なのかも知れない。
作者の提示するモデルには極めて説得力があるが、ならその目でいまの予算配分をみてみると、全然だめじゃん、ということは素人の僕でもわかった。こうした現状に対する批判などを全く欠くのも、この本が淡泊な印象をうける理由なのかも知れない。
あと、どうでも良い話しだが、この本は遠目に見たら、『コイソモレ先生』(しりあがり寿)と背格好がよく似ていて、あれっと思ってしまう。