- 作者: ヘレンミアーズ,Helen Mears,伊藤延司
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2005/06/01
- メディア: 新書
- 購入: 5人 クリック: 12回
- この商品を含むブログ (8件) を見る
帯に、
「GHQ最高司令官マッカーサーが
日本での翻訳出版を禁じた衝撃の書」
なんて、扇情的な煽り文句(これは馬から落ちて落馬みたいな言葉だな)がついている。
アメリカの(GHQ付だったらしい)社会学者が、敗戦直後の時期に、太平洋戦争における日本の状況分析を行った論文。簡単にいうと東京裁判の史観と真っ向から対立するような内容であり、それ故に日本に対してやや弁護的な論調となっている。
ま、擁護的というか、そんなに擁護的ではないが、いわゆる『アメリカ』の夜郎自大に正義を振りかざす論理に対してのアンチテーゼであるので、日本側にもバランスをとっているということだと思う。これは、アメリカ人によって書かれたアメリカ国内批判の本である。
我々がこの本を一方的に賞賛するのは自家薬籠中という感じはするが、我々が所与のものとしてきた戦後史観というものが、いかにアメリカの建前におもねったものであるかということは、知っておいても罰はあたるまい。しかしアメリカ人のこういう論を移入する形でしか、こうした考え方を受け入れられない我々も哀れな存在であると思う。
ところで、敗戦直後の日本に対してかくも擁護であるヘレン・ミアーズは今の日本に対して果たして擁護的であるかどうか。戦後の日本は、アメリカのいう「建前」に全面的に沿って動く存在で、アメリカの言い分を丸呑みにしている、いわば属国である。その見返りとして経済発展というものを得たわけだが、日本が示したこの「変節」はミアーズがこの本を通して伝えたかった事からすると、真逆の行為といえなくもない。