- 作者: 川上弘美
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/10/01
- メディア: 文庫
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(単行本は→isbn:4120034429)
特殊な状況に置かれた主人公の行動に、リアリティを感じられるかどうかはその人物造形の確かに依存するが、作家が、自分と異なる性を一人称で書く場合、どうしてもそれによる違和感を感じてしまうのは、僕の了見が狭いんだろうか。
特に、この作品の主人公は男子高校生だ。こんなの題材として一番難しいと思う。男子高校生なんて、自分の高校生の頃なんて思い出したくもないし、はっきりいってブラックボックスみたいなもんですよ。おまけに難しい家庭環境。こんなの特殊すぎて、わからん。
ま、逆にいうと、この本は環境に対する彼の無力さがテーマなんだろう。主人公は家庭環境や周りに翻弄されているが、終盤自分で選択をする機会が与えられる。彼がとった選択肢は本当に彼の人生を俯瞰してみて、幸福な選択であったかどうか、なんともいえない。ただ、自分で選択をすることでさえ喜びを感じざるを得ないほど他人に振り回された人生、ということになるだろうか。
あと、担任のキタガーこと北川先生はすごくよい。この人は『センセイの鞄』でもそうだったけど、教師に彼女思い描くところの理想像がありそうだ。内田百輭に影響を受けているということだから、百輭先生のテイストがあるんだろうなあ。(百鬼園随筆→http://d.hatena.ne.jp/hanjukudoctor/20060929)