- 作者: 日垣隆
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2004/09
- メディア: 文庫
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冒頭いきなり『天声人語』についての批判エッセイ。
「最近の天声人語はつまらん」と批判することは簡単だが(実際ネット上でもこの手の論議は活発だ。ネット上では朝日はダメというのがマジョリティーですらある)ここまで精緻にその「ダメ」性をあきらかにするのは他に例がない。なにがすごいって、執筆者の書く分野の狭さと偏りや文章のまずさ、コラムとしての浅薄さなどを、いちいち微にいり細に入り例証しているところ。過去の天声人語にも目を通し、その歴史的変遷も押さえながら、統計的な解析まで加えている徹底ぶり。
これ、天声人語に対する攻撃だけど、執筆者に対しての個人攻撃でもあるわけだ。しかも個人攻撃をしながら、あくまで執筆者の名前は出さない、つまり出す価値もないというさらに二重の屈辱で、天声人語執筆者にとっては拷問に等しいだろうな。
つくづく、敵に回したくない人ですよ。
この人のコラムって、基本的に「喧嘩上等」の姿勢だよね。
きっと、人間関係という退路を断つことによって自分を高めてゆくタイプの人だと思う。たとえ攻撃されても十分反撃できるほど、事実関係を押さえているから、読み手としてはこれほど信頼感のある書き手はいないんですけど、畳の上では死ねない気がして心配です。