半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

綿矢りさ『インストール』

 ちょっと息抜きに図書館にて。
個人的には『蹴りたい背中』よりも面白かった。おそらくプロットとしてポイントを押さえていること(逆に言うとベタだという批判にもなろうが)や、やや希望を持たせるエンディングの読後感のよさのせいだろうか。それに正直言って、『蹴りたい背中』では「俺も蹴りたい!」とは思えなくて、むしろ「蹴られたくない!」と思ったし。

 二作読んだので、この作家の文体のクセはずいぶん理解できたような気がする。結構この女子高生文体が論議をよんでいるようだが、これって本当に女子高生文体なのかな。きわめて口語的であるのは確かだけれど。

 確かに、一見すると読みにくい印象を残すが、おそらく音読すればちょうどいいリズムだ。これは明治の『言文一致運動』以前の戯作チックなリズムに近いと思う。夏目漱石志賀直哉、谷崎等など、現在の作家の文体は皆これらの強い影響下にあるが、二葉亭四迷浮雲』や福沢諭吉福翁自伝』なんかと似ていると思った。

 ずいぶん若く美しい作者だが、こうしたことに自覚的に書いたのであればすごいことだと思う。斉藤先生、次版の『声に出して読みたい日本語』には是非掲載してください。

ということを発見して「これってすごい発見じゃないの!?」と思って、ぐぐってみたら、同じようなことを書いている人はちゃんといた。僕みたいな人間が気づくんだから、みんな気づくのだ。残念。