やっと買った!
書かれている世界が、生々しい実在感を伴うから、読み出すとまるで世界の中にいるかのような気分にさせられる。って「はてしない物語」の中で書かれているファンタジー世界のようだが。
ゲド戦記のすごさは、4巻以降、今まで物語の中心であり、絶対的なものとして扱われていた「魔法」が相対化され、多元的な話になることであろうか。1〜3巻もいいのだが、いかんせん魔法というものがテーマであり、テーマに沿って物語は収斂している。だが、4巻、5巻では物語のたがは意図的にはずされた格好となる。
「魔法」というもので規定されていた世界観の斉一性をも崩しかねない価値観の相対化は、しかし物語が自律的に歩き始めたようにもみえる、圧倒的なリアリティーを持っている。
この外伝も、そういった、4巻以降の流れで書かれている故に、そうした魔法以外の価値観が取り上げられている。本編では4巻・5巻は1〜3巻より以後の時代について書かれているが、この外伝は必ずしもその時間的経緯に沿っていない。3巻以降の質的展開が時代をさかのぼって書かれ、この物語世界の通奏低音が魔法だけではないことを証明する役割を果たしている。そういう意味では外伝といえども、「カワウソ」のエピソードなどは書かれなければならなかった物語群ではないだろうか。世界観の斉一性のために。