なんかで取り上げられていた本。読んでみたら面白かった。
『トラクター』という農作業の道具を通じて、世界史を切り取った本。
大きな流れは二つ。
トラクターという機械の勃興から発展、このへんの機械の進化発展の歴史。
トラクターという道具で、世界がどうかわっていったのか。
トラクターが勃興してきた19世紀末から20世紀というのは、共産主義が世界を席巻したり、戦車という兵器が重要な役割を果たした時代なわけなんだけれども、共産主義における農村の組織化(農奴制からの解放、集団農場制度=コルホーズ・ソフホーズ)や、戦車の履帯(キャタピラ)の起源はトラクターだったりするわけで、
あまり顧みられていない「トラクター」という農機具を一つの軸にして世界史を眺めると、全く世界の見え方が変わって見える面白さ。
ちょっと前に「コンテナ」ってすごい発明だよねというのがYoutubeとかでも流行っていたが、それに近い新鮮な驚きがもたらされる点でこの本もなかなかのインパクトがあるかとは思った。
(元になった本はこれ。)
* * *
新書という、自分の本業に関係ない分野のことを手軽に俯瞰できて、お手軽に知的好奇心を満たすという*1新書のあり方に、これほど忠実なものもあるまい。
この本を書いた著者の着眼点はすごくいいと思うけど、それを良きものとして珍重する自分の視点はかつてのサブカル的な史観であり、もはや時代遅れ感がある(もうすこし正確にいうと、戦後の教養主義が80年代のカルチュア主義によって変質してしまった体系的な視座を失った知の渉猟趣味、ということ)。
少し反省しよう。
いや、いい本だと思いますよ。
*1:すげえ悪い言い方しているけど、僕自身は新書大好きなのである