半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

おかゆネコ

ちょっと前に買って読んでいたのだけれど、二巻で止まっていた。
Kindleを見返してみて、7巻まで読んでみたわけ。

一人暮らしの男のところに、祖母が飼っていた猫がやってくる。
猫は『よろしくな』としゃべる。

「なんでしゃべるの?
「ちょっと前にしゃべり病にかかったらしい。」

しゃべり病という、ない病名をしれっと出すところ。それについての一切の説明もないところ。
この辺りはいかにも吉田戦車らしいと思う。

ビール会社で働いている主人公、主人公の上司の愛猫家、近所の母子とその夫、その同僚の研究開発部の女性、その父親、甥、出家したライオン(しゃべり病の先輩)、おかず犬。などなど多彩な登場人物が織りなす脱力ワールド。

吉田戦車も、大ヒットした「伝染るんです*1の頃は、ことさらにシュールで説明ないスタイルだった。???が飛びまくっていたが、その当時はむしろその理解不能性が斬新だったのだ。
それから考えると、おかゆねこは、随分親切でわかりやすいと思う。
決して流行りの画風ではないのだが、いい感じにキャラが空間を縦横無尽に動いている。うまいよな、やっぱりこの人。

しかし「お粥」というかなり珍しい特定ジャンルの料理漫画で、
なんと!七巻も続くのである。

はっきりいって、お粥とか割とどうでもいい感じのストーリーテリングではあって。それでも漫画が続くのは登場人物の住む箱庭の世界観の心地よさ、というところだろうか。
しかしうたた寝から突然目が覚めたかのように物語は終わる。

主人公と同僚の女性との間の微妙な距離感が結局どうなるのか、と思っていたが、そこについては、結局曖昧な感じではあった。
その意味で七巻までひっぱりやがって……とは少し思った。

それにしても当時の不条理漫画の人たちも随分と老い、現役を続けている人も少なくなった。
自分も老いた。

*1:これも私が中高生の時分の作品なので、今の若い人に見せても全くピンとこない