半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

"Love for Sale" 内田春菊

女流作家が主人公。バリバリ仕事をしているのだけれど、年下の彼氏がいたりする。
年下の彼、その1:自意識過剰で行動の伴わない癖に嫉妬深い。セックスはうまい、その2:駆け出しホストで自信満々だが巨根をひけらかし、セックスは雑、その3:猫っぽい不思議系だが……

いや、もう、なんといいますか。男の悪いところばっかり煮詰めたようないろんなタイプの地獄めぐりっすかね。
そもそも、ホストクラブという池で釣りをしていても、そりゃそんな顛末になるでしょうよ、と思う。
癌になったり突然死したり、と、人生をそれなりに過ごしてきた人ならではの描写も生々しい。

性別を逆にしてみれば、独身貴族が、若い女の子で遊んでいるのと、なんら変わりはないのだと思うけど、
この関係だと、あけすけな描写をしても別にそれほど非難されない。それは、社会の基調がやはり男尊女卑であり、性の搾取というと、男性が女性にするものというコンセンサスがあるから。
こういうパターンは、世間の受け止めも未成熟なので、ええ塩梅にスルーされているんだろう。

若い異性に、セックスを求めているのか、愛を求めているのか、本人もわかっていないところが、誤解や錯誤の原因なんでしょうけど、まあ本人もわかっていないわけだし、その時の気分で変わるんだろうし。

ベテランの作品だけあって、絵は少ない描線でもとてもうまい。
特に、人体の柔らかい曲線などの表現は、手慣れたものだよなあと思う。
(キャラクターの顔の造作のかき分けは、みな同じようにも思う。まあこれは記号みたいなもんだ)

それにしても男性の描写なあ。内田春菊先生の身近な男性のディテールを再構築したような人たちなんだと思うけど、アリとキリギリスでいうと、完全にキリギリスの人たち。

私は夜の職業の人たちと普段交わる機会がほとんどないので(ジャズなんぞやっているけど、地方都市のそれなど大人しいもんで、モテとは無縁の人間がやっているんじゃないか)よくわからないんだけど。
そうそう、「Love For Sale」は、ジャズのスタンダードでも有名な曲で、まあそのもの娼婦的な歌です。
Chet Baker版の激シブバージョンをどうぞ。
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