半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『結婚不要社会』

オススメ度 90点
じゃあどうなる…がいいビジョンない度 120点

結婚不要社会 (朝日新書)

結婚不要社会 (朝日新書)

山田昌弘社会学者。それこそ、このブログとか書いている時代と活動は重なるので、折に触れその言説は目にしていた。
キーワードは「パラサイト・シングル」であったり「希望格差社会」。

ポストバブルの日本社会のあり方を鋭くえぐる評論の人。
ちょっと前には、「モテる構造」というこの本を読んだりもした。
halfboileddoc.hatenablog.com

そういえば、古典的な日本社会では、男性は女性が自分に対し興味があるか、ということはどうでもよくて。
物理的に女性を独占(専有)しているかどうかを問題視する(だから不貞が許せない)ということなんだな。

私はどちらかというと、女性は選ぶ権利のある性であると考えているけど、そういえば因習的な日本の考えはそうだったなあ。

* * *

この本は、少子高齢化の日本において「どうしてこうなった」ということを振り返っている本。
端的にいうと、そういう本。

山田昌弘氏のメインのフィールドの本であるだけに、読んで深く頷けることが多かった。
しかし、そうだとすると、日本の少子高齢化は、このままで、日本は滅亡してしまうことになるんだろうな……と慨嘆して暗い気持ちにもなる。

hanjukudoctor.hatenablog.com
以前にこんなことを書いたが、婚外子事実婚の文化はやはり日本では(というかアジアでは)根づかなさそうだ。

以下、備忘録
・ここ25年、結婚難に関する社会的なロジックは何も変わっていない(問題も解決していない)
・結婚難の本当の原因は、「結婚=幸福」という思い込みにある。
・ヨーロッパでは結婚せず事実婚・同棲カップルからの出産、子育てが当たり前になっているが、アジア社会ではそうなるのは難しい。
・日本的社会では、男性にとって結婚は通過点。女性にとっては「生まれ変わり」に等しい。
・バブル以降の出生率低下の際に、多くの学者は「晩婚化」と捉えたが、本当は「未婚化」だった。
・バブル前後では「恋愛が活発化したから結婚が減っている」という状況だったが、今は結婚は減っているけど恋愛も活発にもなっていない。
・前近代の結婚のありかたと、近代の結婚のあり方(意味)は大きく違うが、近代社会は「結婚していない人の居場所がない社会」としてスタートした。(夫婦に特権的な位置付けを与えた反面、家族以外に自分の生活を保証してくれる存在がなくなった)
・戦後は、農地改革や経済発展の後押しもあり、誰と結婚しても「上昇婚」という期待がもてた。(今はそうではない)

・女性が結婚後夫の収入をコントロールしているという状態が、日本でフェミニズムが浸透しなかった大きな理由
・ヨーロッパでは、近代的な結婚制度は完全に形骸化しているが、日本社会では従来型の近代的結婚に固執している
・ヨーロッパは結婚は不要だが、幸せに生きていくにはパートナーを必要とする社会。他方日本はパートナーすら不要な社会(「おひとりさま」)
・今の若者は、むしろ世間体や見栄に縛られている人の方が多い