オススメ度 70点
現代人が死を考える系文学の古典か度 100点

- 作者:ミッチ・アルボム
- 発売日: 2004/11/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
死について考えることも、語ることも難しい。
死はそれぞれの生の補集合であるので、生きている人生の内容によって、死というものの捉え方も変わってくるから。
スポーツコラムニストとして活躍するミッチ・アルボムは、偶然テレビで大学時代の恩師の姿を見かける。モリー先生は、難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)に侵されていた。16年ぶりの再会。モリーは幸せそうだった。動かなくなった体で人とふれあうことを楽しんでいる。「憐れむより、君が抱えている問題を話してくれないか」モリーは、ミッチに毎週火曜日をくれた。死の床で行われる授業に教科書はない。テーマは「人生の意味」について。
恩師の死に立ち会うことにより、自分の人生や死についていろいろ考える主人公。
浮世での仕事に忙殺される、主人公の現在の生活と、理不尽な病気にかかりながら、怒ったり絶望したり自暴自棄になることもなく、死を穏やかに迎えようとするかつての恩師。動と静。
「人生は前に引っ張られたり、後ろに引っ張られたりの連続なんだよ」
「どっちが勝つって?」
「そりゃ愛さ。愛はいつも勝つ」
というKANのようなことを言うモリーは、確かに仏教の高僧のような高潔さをもって、死にゆく。
これはノンフィクションなのであって、プロッティングとしての起承転結はない。
だが、アメリカは、現代文明の最先端の中で死については悩みが深いのだろうなということはよくわかった。
宗教的な思索を、万人受けするような形で届けるのは難しいものだ。
この本はその辺のバランスがよくできていて、ベストセラーになるのもよくわかるが、ベストセラーであるにふさわしい、咀嚼しやすい内容であるなあ、とも思った。