半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『反穀物の人類史』

オススメ度 100点
主客転倒度 100点

ちょっと前にWeb書評などでも話題になっており、半年前くらいから読んでいる。
実はだいぶ前に読了したのだが、話題にすべき内容が深すぎるので、まとめきらずに置いていたのだが、
尊敬する歴史ブログである「歴ログ」で、この本に関するディープな書評がでた。
reki.hatenablog.com

もうこれ書評というか、サマリーですよ。
読み返したい時どうしようかなーと思ったらこのブログ見にいこ。
自分なりに内容の紹介をしようと思っていたが、このブログに集約されているので、それはやめにした。

非常に面白い本だった。
なんとなく今まで制度として捉えていた社会の構造のあり方について、考えるきっかけになる。
この本は古代の事象を取り扱っているけれども、こういう思考のフレームワークで現代を捉えると、また新たな見方ができるのではないかと思う。

鍵は、主客の転倒、もしくは受動・能動の転倒。原因・結果の転倒。
つまり、「Aがある結果Bとなった」という通常のヒストリーを、裏から眺め直すと「BのためにAは動いた」みたいな状況がみえてくる。
だから、万里の長城のような騎馬民族の侵入を防ぐ防壁は、実は、逆に国家所属の農民が国家の統制の及ばない地に逃げてしまうのを防ぐ壁であるのではないか?という考えがでてくる。
また、狩猟生活から農耕生活へのシフトは、人間が穀物を植えて収穫し、野生動物を家畜化したという文脈で語られるけれども、同時に、農耕生活民は、狩猟生活民とは全く生活様式も趣味嗜好も、身体的能力も違っている。実は人間も、自らを「家畜化」(この本では「ドムス化」という言い方をしている。ドムス化に関する話は例えば『ホモ・デウス』でも言及されていた。)しているのだ。という話。

すげーどうでもいい話ですけど、独身貴族の遊びまわっている男性(もしくは女性)が、「身を固めて」家庭生活に入る。
家庭生活では、生活・行動の自由が奪われ、お小遣い制になったりする。
独身の頃の自由からすると、なんといいますか、随分違った生活ではあるが、しかし「定住生活ゆえの安定」は手に入る。
我々の出自は、ドムス化された農耕民族なので、こういう定住生活に親和性があるのだろうかね。
そう、結婚、とはドムス化であるのだ。「ノマド生活」という言葉もあったが、あれは独身にのみ許される生活様式だと思う。

独身→結婚と狩猟・採集生活から農耕生活へのアナロジーは、そのものずばりレキシの「狩から稲作へ〜」を参考にされたし。
そういえば、年貢 for Youも、ちょっと似たニュアンスがあるな。

狩りから稲作へ / レキシ (歌詞あり)

レキシ - 年貢 for you feat. 旗本ひろし、足軽先生