半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『新カラテ地獄変』1〜20

オススメ度 40点
肛門に執着しすぎ、度 150点

新カラテ地獄変 1

新カラテ地獄変 1

前回の「カラテ地獄変牙」に引き続き、Kindle Unlilitedで読了。
ソバは噛まずに飲み込んでこそ、みたいな言葉もあるけど、このような娯楽劇画なんて、精読するもんじゃなく一気に脳みそに流し込んでさっさと忘れるに限る。

カラテ地獄変牙では、牙直人という孤児院育ちのハングリーな若者が、大山倍達、的な大東徹源というカラテの師匠と出会い、師匠の命で日本全国、全世界を駆けずり回される話で、結末部では、法外な報酬をとり要人をボディーガードするカラテボディーガード部門を作ろう、となり、これが、それまた前作である『ボディーガード牙』につながっているらしい。
21世紀的な言い方でいえば、エピソードゼロ、的なやつなのだが、この時代にはそういう言い方はなかった。

で、この新カラテ地獄変は、それのさらにエピソードゼロ。
牙直人の師匠である大東徹源が、牙直人と出会うまでに、世界を股にかけた、冒険活劇。ということになる。

まあ、新カラテ地獄変まで読んでわかった。
『カラテ地獄変牙』の途中までは、なんちゅうても『空手バカ一代』のサイドストーリーという雰囲気が横溢していた。
が、後半から革命前夜の南米某国に飛んで潜入したりするくだりから、どうにも価値観の転倒と被虐趣味の濃度が濃くなってきたなあと思った。
けど『新カラテ地獄変』は、主人公は牙直人から師匠の大東徹源になり、全く別のストーリーなのに、主人公の性格や行動様式は前作と全く変わらないし、物語の様式もおんなじ。そしてストーリ性がさらに薄れて、性交と拷問が中心になってくる。
エロ濃度でいうと『カラテ地獄変牙』がエロもあるストーリードラマだとすると『新カラテ地獄変』は完全にAV。
舞台こそ世界を股にかけているけど、結局、梶原一樹の脳内妄想世界にすぎない。
これは一時代前の『セカイ系』ということなんだろうな。

ただ、作画の中城健の作画能力はどんどん向上する。*1
同時代の変態漫画叶精作『実験人形ダミー・オスカー』にも勝るとも劣らない精度になっており、その辺はすごいなあと思った。
僕も10年ぶりぐらいに『ダミー・オスカー』とか書きましたけども。今の若い人は知らないですよね。

時代感としては、戦後、そしてキューバ革命前夜の冷戦真っ只中の時代、ということで、そういった、スパイ活劇とか、ナチス残党とか、ソ連の影響下にある赤化ゲリラだとか、そういう話。
もちろん、エロの題材になっているだけで、深い話がなされるわけではないのだが、そういう時代なんだよなーと懐かしい気分になった。
そう、今の日本は落合陽一だが、当時の日本は、その父、落合信彦の時代だったんだ、ということを再確認させられた。
昭和は遠くなりにけりだなあ、と思う。

*1:ちなみに梶原一騎が逮捕されてしまうので、最終巻だけ作画は別の人。クレジットもされていないけど