オススメ度100点
昔の芸能界やばすぎ度 100点
吉田豪の初期インタビューの傑作集。
jazzとかでいったら、8 Classicsとか、CDのコンピレーション盤あるじゃないですか。それに近い感じがある。
8 Classics by Hank Mobley (2011-07-15)
- アーティスト:Hank Mobley
- メディア: CD
この本は吉田豪の、守破離の「守」にあたる部分と言えるだろう。
インタビュアーの吉田豪の凄みは、インタビュアーとしての瞬発力ではなく、事前の準備にある。
ご本人の著作や雑誌記事などをとにかく集めて事前勉強。
本人も忘れているような事績をきちんと準備していて、それを本人にぶつける。
これ、例えば医者の話で言ったら、本人とその周辺の論文とかを事前に読み込んでおいて講演会に臨むようなもんで、ありきたりな質問の中に、例えば論文の実験系の細かい条件設定とかのレベルのめちゃくちゃマニアックな質問が混ざっている。
そんなん質問されたら、薄気味悪いか、もしくはめっちゃ感激するかどっちかだろう。
まあ芸能人なんて自分大好き人間の集まりなんだから、そこまで自分のことを理解しようという姿勢は、芸能人冥利につきるだろう。
インタビューをするから事前勉強というわけでもなく、昔のサブカルチャー的な事情に異常に詳しいのもある。
この本は、そういう昭和の芸能人のインタビューという、「吉田豪の一番おいしいとこ」が味わえるやつ。
Kindle化されていないので、紙の書籍で買ってしまったのだが。
……坂上忍・岸部四郎・チャックウィルソン、安部譲二・カルーセル麻紀、三浦和義、そうそうたるメンバー。
当時を知らなかったので、今知ったんですけど、ロス疑惑の三浦和義って、子役だったりしたので、小さい頃から芸能界とかなり関わりもあったんですね。華やかな芸能界のちょっとハズレの方で高度経済成長の日本のなかでおいしいアパレル会社なんてやっていた。素人と言えない立ち居振る舞いとか、胡散臭さといってもいいくらいの弁舌力も、そういう背景に根ざしたものだったんだ。
まあ、チャック・ウィルソンとかもそうだけど、やんちゃ列伝がひどすぎる…
今だったらとても出版できないというか、SNSで非難されまくるレベル。
昭和はおおらかだなあ。
* * *
この前の文藝春秋ベストセレクションといい、なんか昭和の文物を懐かしむ自分がいる。
こういう知識を増やしたところで、今の若い人との会話の断絶が一層すすむばかりなのに。
我、老いたり、なのか。
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