半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『中小企業の「ストックビジネス」参入バイブル』

オススメ度 70点
自分が差し迫っている事柄だったらもっと点数上がった度 100点

中小企業の「ストックビジネス」参入バイブル

中小企業の「ストックビジネス」参入バイブル

 

ストックビジネスへ移行していかなきゃいかんよ、という話。

めっちゃわかりやすい話でいえば、海で魚取るときも、生態系のことを無視してどんどんとっていてはいかんよ。
とりつくさないよう、全体のことをみて、破綻しないようにとりましょうね、みたいなのあるじゃないですか。

ストックビジネスモデルも同じ。
物を売って終わり、のビジネスモデルは不安定。
一定の収入が得られるような「仕組み」を作る。そうするとビジネスモデルとして安定する。

  • ストックビジネスは継続的な売り上げが期待できる。
  • IT企業のサブスクリプションモデルも、一種のストックモデル。
  • 社内リソースを活用して、自社企業の「ストック化」や新規事業の「立ち上げ」を行う方法。
  • ストックビジネスは農耕型といってもいい。逆に、既存のフロー型モデルは、単年度の売り上げを急拡大させやすい。
  • アマゾン、マイクロソフト、アドビもストックビジネスに舵を切った。
  • プラットフォーム型は高いシェアをとれると独占化できるので収益性が高い。

FC型の水平展開とか、レバレッジドバイアウトとか、ビジネス展開のスキームもいろいろ紹介されていたが、そこは、一人一人患者さんに相対することでしか売上を積み重ねられない医療は、ちょっと蚊帳の外かなあ、とは思った。医療の末端にはレバレッジは効かない。

  • ストック型ビジネスでは顧客ごとの購入単価×購入頻度×継続期間=LTV(Lifetime Value)の最大化するようにデザインする必要がある。
  • 業績はROIC(投下資本利益率)で管理し、事業の収益性をきちんと管理する。
  • ニッチ独占型、自社周辺事業による多角化
  • 他者が容易に競合できないようなビジネス上の参入障壁を選ぶ

いろいろ勉強になったが、私は中小病院経営者なので、事業展開やFC化などについては、あまり参考にはならなかった。

ただ、ビジネスモデルとして「かかりつけ医」スタイルこそがストックビジネス型の最たるもの。
基幹病院がとりうる「紹介・逆紹介」型は、フロー型ビジネスモデルであると言える*1

このことは知識として知っていたが、診療所の開業医が経営上安定して有利である理由の一端がより深く理解できた。
実は80床足らずの中小病院の我が身としては、外来診療を、専門特化した紹介・逆紹介型に舵を切るか、それとも地域密着のかかりつけをどれだけ残すかで悩んでいる。ずっと悩んでいる。
だが、やはり安定した収益源であるかかりつけ機能を細らせるわけにはいかないな……と考え直した。

*1:もちろん、顧客を紹介元の開業医と考えれば、ストックモデルと考えることもできる