半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

島耕作×転生もの二題。

いやー。長生きしているといいことあるなあ。
島耕作で最近流行りの『転生もの』があるだなんて。
しかも、二つも!

ちなみにどちらも作者の弘兼憲史本人も加わっており、昨今のコンプラどうこうの問題もない。

騎士団長 島耕作 1巻 (ZERO-SUMコミックス)

騎士団長 島耕作 1巻 (ZERO-SUMコミックス)

まずは、こっちから行こうか。
これは、『島耕作』の主人公島耕作が、目がさめると転生していて、ファンタジーの世界の住人、騎士団長シマとして目覚める、というお話。
王国の名前はファーストターフ(つまりは、初芝、ってことね)。

騎士団長としての生活が始まるわけだが、島耕作の過去作品にあるようなイベントがあったりなんやかやで、まあファンタジー世界を舞台にした課長島耕作のパロディーが繰り広げられる、んだと思う。敵国はソラー帝国だったりするし(笑)。
大町久美子的なのとかもでてくるし、樫村やソフィアとかでてくるし。アイリーンはまだでてこない。

ただ、話が進むにつれて、やはり物語構造にはゲーム的なフレームが存在している。
なんでも、転生して飛ばされたコーサク・シマは、現在課長のランクであるが、『島耕作ポイント』をいう経験値的なものを貯めると、クラスが、課長→部長→専務とクラスチェンジ(出世)してゆくらしい。島耕作ポイントが何で得られるかというと難しいが、原作島耕作にて提示される、島耕作的な行動規範やモラルを満たす行動をとりミッションに成功するとポイントが溜まるようだ。

このお話がどう展開していくのかさっぱりわからないが、世界のゲーミフィケーションというのが所与のものになっていることに、前世代の人間としては、隔世の感あり。あと、原作島耕作の登場人物に似せて絵を描くのは結構難しいよな、と思った。がんばってる。

転生したら島耕作だった件 (イブニングコミックス)

転生したら島耕作だった件 (イブニングコミックス)

もう一つは、「転生したらスライムだった件」と島耕作を掛け合わせた、「転スラ」ならぬ「転シマ」。
転スラの三上悟が、原作通り、通り魔に刺されて死ぬ。生き返ったら、スライム…ではなく、『課長島耕作』世界の島耕作だった。
こちらは、基本的には「島耕作」のサラリーマン世界。そこに転生するわけだ。
ヤング島耕作的な絵柄で島耕作の1エピソードを追体験。これはまあ綺麗に一作で終わる。

* * *

騎士団長島耕作は、島耕作「が」転生する。
転生したら島耕作だった件は、島耕作「に」転生する。
その違いを楽しんでいただければいいと思う。
島耕作が、今やコモディティというか、パロディのアーカイブと化しているんだなーと、いうことに感慨。

個人的には『島耕作』ってバブル前からバブル崩壊、そして失われた30年という日本企業の凋落に重なっているわけで、島耕作って、自分の与えられた場面で「いい仕事」をして社会に貢献しているんだぜ、みたいなサラリーマンの幻想を満たす仕事マンガなのに、会長まで上り詰めた初芝はしらんが、ロールモデルになってるリアルの東芝パナソニックなんてガッタガタ。
冷静に考えると、島耕作が活躍は日本社会の凋落と完全に重なっている。
あんたそんな体たらくでよく女のケツばっかりおっかけてられるな、と言いたくもなる。