オススメ度 80点
- 作者: 西川恵
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2016/10/10
- メディア: 新書
- この商品を含むブログ (3件) を見る
両陛下は生まれながらにして重荷を担い、…他者が下した決断の重みを背負ってこられねばなりませんでした。
(アキノ大統領)
私はどちらかというと考え方としてはリベラルに属する人間なのだが、皇室に関しては別で、天皇制存続および皇族応援である。
イデオロギー的な理由はともかく、完全に属人的な理由、つまり現天皇陛下および先の天皇陛下の人柄によるところが大きい。
皇室が外交にどれほど大きな影響を与えているのか、というのを描いたのが本書。
・政治や外交の論理をあえて排除し、賓客に上下の区別をしていない
・首相が何度訪問しても不可能だったことを天皇が訪れることでなし得たことは少なくない
皇室は日本の元首でありながら、国政・外交への関与が実質認められていないからこそだとは思うが、首相と天皇の使い分けがうまくいっているということなのだろう。
ざっくり総論でいうとそうなのだが、
具体的に、対フランス、オランダ、イギリス、フィリピンパラオサイパンなどの戦地への慰霊の旅の足跡を、皇室に近侍していた筆者が回想する。
皇室の方々は要人との外交は非常にきめ細やかかつ誠実で、なおかつ温かみを感じさせるもの。
もともと対日感情が好ましくない国に対しても誠実な態度を続けることで、気持ちが雪解けてゆく。
これが「皇室外交」とよばれる由縁なのだが、個人的には、そうしたすばらしい皇室の方々の賓客への応対を利用しすぎていないか、ということと、皇室外交以外の外交との協調がもうちょっととれないか、ということは少し思った。