やべえ。10月は意外に忙しく更新が滞りがちだった。
オススメ度 90点
- 作者: 田口佳史
- 出版社/メーカー: 三笠書房
- 発売日: 2016/06/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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「水のような精神を持つ」
ということです。
「上善は水のごとし。水善く万物を利して争わず」
東洋思想を学び、転じて現在は東洋思想に関するコンサルティングを立ち上げて成功している人。
ま、簡単に言えば東洋思想の老子・荘子、韓非子などの言葉をとりあげて、実際のビジネス経験と照らし合わせて語っている本。
その意味で、書いてある内容の方向性はまあまあ予想がつく。
ただ、本にまとめるやり方として、難しすぎず、しかし一方的すぎない。
かなり丁寧にカットバックされているなと思った。
テクノロジーとかとは無縁の、人間関係論とかリーダーシップ論に関しては、東洋の哲学とも言える老荘思想は、我々のありようとかなり親和性があると思う。
40代で、傲慢にならない、慢心しない。柔軟かつ謙虚でいる。
そのためにも生命力の源泉としての「水」のすごさ、強さ、すばらしさを認識し、水のような生き方を目指す。
一章の文字数は短く、かなり現代ビジネス本らしく、読みやすい作りになっている。
現代のビジネス本に頻出するキーワード、「レジリエンス」とか「全体最適」「自己投資」「大局観」のような
概念も、きちんと古典には現れている。まあ昔も今も、人のやることなんてだいたい同じなんだとは思う。
古典というフィルターを通して、現代ビジネスの諸相を見つめると、普遍的なものはいくつか見えてくるのは、ある種当然ではあるが、面白いことだよなと思う。
以下、少しだけ備忘録:
・好調であればあるほど「慢心」という悪魔の手にからめ取られる危険が増します。
・「40歳からは、特定の人だけと付き合ってはいけないよ」「さらに自分の世界を広げないといけない」
・「功成り名遂げて身退くは天の道なり」
・「男坂」と「女坂」
・「その生を生とするの厚きを以ってなり」(生に執着していると長生きできないよ)
・「四端」惻隠(困った人をみたら気の毒に思う)・羞悪(不善を恥じる心)・辞譲(譲り合いの精神)・是非(正しいか否かを判断する精神)。四端の心無きは人に非ざるなり
・「知者は水を楽しみ、仁者は山を楽しむ。知者は動き、仁者は静かなり。知者は楽しみ、仁者は生命長し」
ただ、古典の思想でいえば、老荘思想・儒家、韓非子など、それぞれの思想は、相容れないところもあったりする。中国古典思想という、一枚岩で盤石な整合性のある論理体系が存在するわけではないのである。
筆者は古典に非常に強く、こうした思想を縦横無尽に切り取っているわけだが、当然そこには筆者のバイアスが入っている。それは読み手として意識した方がいいんじゃないか、というのは少し気になったところ。
(ささやかな経営者なるものの端くれである私がみるかぎり、別に問題ないとは思うけどね。)
逆に古典からの抜粋だからといって、他人の褌で相撲をとっているわけではなく、取捨選択作業に作者のクリエイティビティは十分に発揮されていると思う。