半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『池田勇人 ニッポンを創った男』

オススメ度 80点
現実逃避度 80点

池田勇人 ニッポンを創った男

池田勇人 ニッポンを創った男

選挙が終わったあとなので、ちょっと前に読んだ池田勇人の伝記を。
なんか最近マンガにもなっていた池田首相の伝記。広島の人なので、手放しで点があまくなってしまうところは仕方がない。
ちなみに漫画はこれ。

疾風の勇人(7) (モーニング KC)

疾風の勇人(7) (モーニング KC)

残念ながら造船疑獄までで、連載終了。総理になってからが本番なのにね…

池田氏の人生は戦前・戦後の混乱期から高度経済成長、そして自民党の政治基盤が盤石になってゆく時代に重なる。
昔は安定した政権与党という状態になっていなかったので、合従連衡が当たり前。
55年体制が形作られる前の政局は流動的で、わくわくする。その後も自民党内の派閥抗争もあるしね。

天疱瘡、とか、妻の死とか、肺結核とか、前半生は、なかなかもがき苦しむようなものであったが、
大蔵省での活躍とその後の政治については、トントン拍子。
直情径行で、歯に衣着せぬ言動で、なんどもマスコミのバッシングにあってしまうけれども、単純な人でもなく、前半生の苦労もあるので、人心掌握にもたけていた。政治勘もするどく、政局での立ち回りも得意だったと。

最後は、食道がんで、かなり早く横死してしまったのは残念であるが、いかにも昔らしいエピソードであるなあと思った。

私はこの時代を追体験しているわけではないのだが、親世代である団塊層にはノスタルジーと共にぶっ刺さると思う。
しかし高度経済成長期の日本は、ある種シンプルな考え方で、国を発展させたら人民も富む、で遮二無二進んだ時代。
バブル、そしてバブル崩壊後、そして、ある種清貧の思想がもてはやされた90年代は、今生きている我々を生きにくくしているように思う。

バブルの時の金満主義は正視できないし、醒めた目で見ずにはいられない。
でも、清貧という状態で、国が回るかというと、徐々に商品の冷え込みによる経済の鈍化で、緩慢ではあるが衰弱してゆく。
その間、周辺諸国は、50年前の日本のようなナイーブな考えで、遮二無二突き進んでいる。

難しい問題だよね。
今回の選挙だって、投票率を見る限り、絶対的な窮地に追い込まれていないように思える。
革命を起こすよりはまず投票にはいくだろう。
50%以下ということは、現状に問題意識もない、と取られても仕方がない。
もしくは追い込まれていてもそうは気づかない「茹でガエル」状態にさせられているのか。