半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『離婚』色川武大

オススメ度 70点
元嫁のファムファタル度 100点

新装版 離婚 (文春文庫)

新装版 離婚 (文春文庫)

(装丁は以前のものでした)
Kindleセールで購入。
阿佐田哲也こと色川竹大の結婚にまつわる小説。多少自伝的な小説なのか。直木賞受賞。

離婚したところから話は始まる。ズルズルと続く関係。
気がつくと、付き合い始めた時に「あたしあなたのお妾になりたいの」とお互いに独身だった頃に女が発したセリフに、男は「こいつは天然だなあ」と思わされたのだが、気がつくと結婚後数年を経てまさにそのセリフ通りといってよい関係になってしまった。
出会った時の何気ない女のセリフに、関係性の全てが予言されているという恐怖というか人生のおかしさというか。
 小説のポイントを一言で言うと、そういうやつ。

婚姻という社会制度と、男女の関係というパーソナルなものって、そりゃ解離しやすいもんだ。
昭和の高度成長期、田舎の因習的な風習では女性は処女で嫁ぐという価値観が濃厚だった時代だけど、都会にでて親の監視のなくなった娘たちは、今と同様にまあまあ遊んではいたらしいね。こういう小説が流布していたら、そりゃ親御さんは娘を都会にやりたがらずに田舎に留めおきたかったわけだ。
それより昔は子ナシの別れた女に対しては一年の扶養義務があるんだ…
これは社会通念だったということ?どうもよくわからない。
この本は市井の生活を虫瞰的に納めたものだから、その時代のコモンセンスがよくわからない。生きてないし。

前作に当たる少女達と交流する話が末に収められているが、読者はこいつ羨ましいな、と思ったに違いない。
僕も羨ましい。
若い女性に、慕われたい。
なんか小田原ドラゴンtwitterみたいになってますけど。

個人的な話だが、私の妻は、この作中の嫁とは全く逆の、計画性があり、感情的な安定度が抜群な社会人としてまともな人なので、こういう社会人としてはむちゃくちゃの女性、猫か犬かでいうと猫、いや猫ですらなくてやたら金のかかる愛玩動物のような女性の放つ魅力というものを味わってみたい気がする…とミッドライフクライシス気味のおじさんは思うのでした。多分味わわないけど。