半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『Gunslinger Girl』

オススメ度 90点
作画の成長著しい度 100点

公益法人社会福祉公社――表向きは障害者支援のための首相府主催の組織だが、その実態は瀕死の少女たちに機械の身体を与え、その少女たちに政府に敵対する勢力を秘密裏に排除させる諜報機関だった。一家殺害事件の生き残りの少女・ヘンリエッタは「条件付け」という洗脳処理により、以前の記憶を封印され「義体」となる。そして元軍人のジョゼ・クローチェは、テロリストに家族を殺され、復讐心に捕らわれ社会福祉公社に入り「担当官」となる。義体と担当官、二人はつねに行動を共にし、銃を手にテロリストの戦いに身を投じていく。架空のイタリアを舞台とした、少女と銃、そして周囲の大人たちが織り成す群像劇。第16回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞。

前から気にはなっていた作品ではあるが「女の子×銃」という掛け合わせ。
アフタヌーンでやってた「ガンスミスキャッツ」と混同していたのですよ。

(これはこれとして改めて読んでみたい気もする。それにしても20世紀の画風ですな、これは。)

義体となる少女は、身体の80%機械化された強化人間。
薬物で条件付けを施され、主人の命令に忠実に従う「人形」となり、非情なミッションを遂行する。
なぜ少年ではなく少女のみなのか、というところは難しいところだが、義体はある種の警察犬みたいなもんで、義体デミヒューマンという意味では、フェミニズム的には批判される余地を残していると言える。
ただ、疑似恋愛関係を利用するという点では、スタートしては少女を使うのだろうし、研究が進めば少年の義体というのもでてきてもおかしくなかったのかもしれない。
それとも、鷹狩りに使う鷹はすべてメスである(ソースは乙嫁語り)とか、そういうのなのだろうか。
ぶっちゃけ、男性よりも女性の方が命令遂行に忠実で体力も根性もある、と言われれば、そうだなあと思う。

それよりなにより、初めは設定が一人歩きした漫画、くらいに思っていたが、4〜5巻あたりから、作者の画力が段違いに上達し、コマ割りなどもダイナミックに進化し、漫画としてのクオリティがめちゃくちゃアップしたのには驚いた。
途中から「続きが読みたい」モードにはまり、一気に最後まで読んでしまった。
イタリアの政治情勢はよく知らないけども、なんか数年くらい経ったらハリウッドに取り上げられちゃうんじゃないか、と思った。

義体として「誰かのために」生きる。という命題は、なかなか難しい。
今我々は自由意志をもった一個人として生きるのが当たり前だが、過去の歴史では、自分のためではなく誰かのために生きる人間は別に珍しいものではなかった。個人の人権を制限された状態が、では不幸であるかといえば、そこには幸福も不幸も、喜怒哀楽もあるのだろう。