半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『凪のお暇』

オススメ度 80点
心につきささる度 70点

凪のお暇 1 (A.L.C.DX)

凪のお暇 1 (A.L.C.DX)

一言でいって、ディスコミュニケーションの漫画。

人にあわせるようとして、言いたいことも言えない。
彼氏が好きだからって癖っ毛にめちゃくちゃ時間をかけてヘアアイロンでストレートにしている女子、凪。
巨乳、ストレート、柔らかい物腰、自己主張しない、という男にとって(そして社会にとって)都合のいい女だった女子が、その「都合のよさ」を演じきれなくなって完全にテンパって休職。
「自分らしい」人生の歩み方を模索する。
その地獄めぐりというか、ビルドゥングスロマンのような物語。

男にとっての「おおごちそう」みたいな女子は、そのポジションを離れて、わかりやすく「底辺」みたいな生活を歩む。
不安や葛藤もありつつ、自分の判断で生きていく女性へ変わりつつある様は、ハラハラドキドキもあり、独白の若干のウザさもありつつも共感できるところ大。
隣室の自由に生きているていのヒッピー風の男(別名、歩くメンヘラ製造機!)に依存して、回復して、なんてエピソードも泣かせる。

そして彼女を傷つけた主犯とでも言える彼氏、慎二は、いろいろ軽薄そうな、適応性の高いチャラ男だが、実はピュアな恋愛心で凪のことがすごく好きだけど、凪的な心性と家庭歴ゆえに、凪に対してアンビバレンツな態度をとらざるをえない。(あえて貶めるようなセフレ的な扱いしかできない)

人間素直が一番だね。
と、自分のことを棚に上げて言えるなら、どんなに幸せかね…

自由に生きたいものです。いや、そうかな。

個人的には一昔前の少女漫画にみられた漫符(喜んでいるときの表情とか)、決してイマドキとはいえない画風に惹かれます。癖ある。
置かれた社会状況や丁寧に描かれたそれぞれの家族歴などのアプローチはまぎれもない現代だけど。
「逃げ恥」と同じくらいには、現代都市生活者の悩みに踏み込んだ漫画だと思う。