- 作者: 長野正孝
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2015/01/16
- メディア: 新書
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わたしは瀬戸内海沿岸に住んでます。
一般的に、瀬戸内海は内海で穏やかであるというイメージがあったのですが、*1
海洋船舶の専門家が著するこの本では、一言でいうと、
いやいや瀬戸内海っつーのはわりと潮流が複雑で、昔のテクノロジーでは結構航海するのに難度の高かった海なんだよね。
だから、最初は日本海側から越前に到達するルートが発達したはずだ。
という趣旨であります。
そのつもりで古代の歴史を再検討すると、いろんなことがすっきりと説明できますよ、という。
おそらく瀬戸内海の航路としての整備は5-6世紀に徐々に形作られたのではないかと筆者は推定している。この頃の操船技術では、沿岸部に避難港がないと瀬戸内海の航行はできない。
5-6世紀の雄略帝が開発を行った可能性が強いが、史実として過去の偉業を盛るために記紀では神武天皇の治績にされている。
だが、神武天皇の時代には瀬戸内沿岸には大和政権に連続性のある史跡もない。この頃は、丸木舟に毛の生えたような船で波の穏やかな日本海沿岸を東進するのが関の山で、瀬戸内海を東征するなんてありえないそうだ。
神武天皇は安芸で七年 、吉備で八年いたとされているが、これはおそらく雄略帝のことだろうと筆者は推定している。舎人親王はその滞留の意味をわかっていないが、数十ヶ所の港に入植し 、港湾を造るにはその程度の年月は必要である 、と作者は港湾専門家として喝破する。
少し論理構成に飛躍があるが、大変面白い。
今の基準で、瀬戸内海は航行しやすいと思ってるが、明石海峡も鳴門海峡も、確かに波も速いよなあ。
「なにわ」は難波であり浪速であるが、古代の地形のままでは波が速く、難しい港であったそうだ。ちょっと今からは想像もできない。
「逆さ地図」で読み解く世界情勢の本質 (SB新書)
- 作者: 松本利秋
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
- 発売日: 2015/05/16
- メディア: 新書
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日本海側からみた時に、歴史地図というのはまた全く違った装いをみせる。
この本は、地図を逆さにして眺めることによって、また新たな見方ができる。という本。
初期の大和政権では日本海側の航海がむしろ主力で、環日本海圏とも言える経済域が存在したそうだ。
地形からみた歴史
- 作者: 日下雅義
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/11/13
- メディア: 文庫
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これはかなりお堅い本で、地質学、考古学の知識がないとなかなか読み進むこともかなわない。
難波は、着岸の難しいところ、ということで命名された、という先の本にあったので購入してみた。ちょっと、難しすぎたね。
*1:このイメージはどこから来ているのかわからないが、多分「中国の川はとても広く大きくて、瀬戸内海を中国人に見せたら『これは川だ』とか言ったとか言わなかったとか、そういう逸話がある。