*[book]田中啓文『こなもん屋馬子』

- 作者: 田中啓文
- 出版社/メーカー: 実業之日本社
- 発売日: 2013/08/06
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田中さんは、僕の大学時代のクラブ(軽音という名前ですが、いわゆるジャズ研です)の先輩なんです。
OB会などで顔をみかけることはありますが、あまり話はしたことがありませんが。
わたしはkindleで購入。
「こなもんやうまこ」は「てなもんや三度笠」的な語のリズム。
構成美を感じさせられる作品です。
起承転結のプロットは全く同じ。
ある種吉本新喜劇の「ベタベタなドラマ」に似ています。あれ、登場する舞台が、旅館だったり、お店だったり書割りも決まっていて、筋立てもだいたい同じですよね。
それと同じで、物語の構成はだいたい同じ。ですが、「天丼」的に繰り返し登場する部分の面白さもあり、また、少しだけ破調の部分もある。なんというか、新喜劇の中毒性に似た読後感があります。
筋は単純。
悩める主人公(毎回別の人がでてきます)が「こなもんや」に辿り着き、「こなもん」(これはうどんだったり、たこ焼きだったり、ピザだったり、豚まんだったりさまざま)の美味さに驚き、そしてドラマが転回してゆく。
悩みだったりトラブルが解決して、もう一度こなもん屋に行こうとすると、店は跡形もなく、その店の存在を覚えている人もいない。
話の特異点はこなもんや「馬子屋」。コナモノならなんでも出すこ汚い店。
そして天界と現世のあわいにあるような異界の存在なんです。
最初に田中啓文「蹴りたい田中」を読んだ時に、そのオチが全部ダジャレに導かれるのにかなりの衝撃を受けましたが(考えてみれば、アイザック・アシモフとかもかなりダジャレ落ちのショート・ショートありますけどね)、この連作短編集は、わりと読み手を選ばず、面白く読めると思います。(『蹴りたい田中』には、僕は選ばれませんでした)。
というか、新作出てたのね。

- 作者: 田中啓文
- 出版社/メーカー: 早川書房
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- 作者: 田中啓文
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