半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

諸星大二郎 私家版鳥類/魚類図譜

私家版鳥類図譜

私家版鳥類図譜

私家版魚類図譜

私家版魚類図譜

諸星大二郎が、気になる。

割とマンガ読みを自認していた私ですが、諸星大二郎については、少し距離をおいていました。
デビュー当時からずっとおいかけているタイプでもなく、著作を大体網羅しているわけでもない。機会があれば読む程度。手元において折に触れ読み返す、というタイプの関わりではなかった。なんというか、ちょっと気持ち悪いのだ。家に置くには。

だから、今回のKindleで購入したこの二冊を除けば、家には暗黒神話孔子暗黒伝しかない。

でも、漫画喫茶や友達の家にある、など機会があって読むと、とても印象に残る。

 *  *  *

諸星大二郎の書く世界は、古代世界だろうと、現代であろうと、そして未来であろうと、なんだかよくわからない諸星大二郎世界特有の雲気が、いつもたちこめているような気がするのである。
それは、まぎれもない、現実世界とは別の何かだ。
この人の必ずしも遠近法とか構図にこだわらないフリーハンドっぽい絵も、なんだかちょっと世の中の自然科学法則によらない感をかもしだすのに役立っているとは思う。

一体この人の頭の中はどうなっているんだろう?というか、実は、本当の世界は諸星氏がみている通りにできていて、それが、今の僕の周りでは感じられていないだけなんだろうか?という気にさえなってくる。
そういう作家の個性的な空気感というか匂いというか、独自のものを作り出せるのは、諸星大二郎ますむらひろしくらいだ。

もちろん、作によって、諸星大二郎の空気感の濃い薄いはある。まるで、ミノフスキー粒子になぞらえて、「諸星大二郎粒子」といっちゃえばわかりやすいかもしれない。
二冊のオムニバスは、諸星大二郎粒子が濃いのと薄いのがほどよいバランスで、もし諸星大二郎よんだことない人に勧めるのなら、今ならこれだな。

鳥類図譜なら『塔に飛ぶ鳥』が、ミヒャエルエンデ『自由の牢獄』のようであり、また、魚類図譜なら、『魚の夢を見る男』がつげ義春の作品のようで好きでした。いずれも、諸星大二郎粒子が濃厚に散布されていて、瘴気のようです。

自由の牢獄

自由の牢獄