
- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2012/08/03
- メディア: 文庫
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書店に行ったら、文庫が平積みにされていた。旅先のお供に購入。
東京のあちこちを電車内・駅構内で読み読み移動した。
単行本は真っ白な、どちらかというと静謐さを感じさせる装丁だったが、文庫はトランプの絵札が背景になっており、記号としては「運命に弄ばれる」的な意味付けだろうか。
小説としては、リアリティーはともかく、神話的なストーリーで構築されているのだろう。
弱小球団のありようにしても(いくらJリーグよりも流動性が低いとはいえ、ここまでバランスを欠いて弱い球団が存続を許されるだろうか?)、主人公の名前や生い立ちなどにしても、現実的にはかなり無理があるように思うが、だからこそのストーリーテリングというものもある。
神話に仮託して初めて書ける強度の物語。
「伊坂幸太郎らしくない」という言葉が、とかくこの作品にはついて回るようだが、あながちそうとも思えなかった。ただ、伊坂作品のプロッティングは、これは今までに何度かたとえた事があるが、まるでビリヤード台の玉が激しくぶつかり合うように、一見偶然の出来事の連鎖で話がドライブしていくけれども、今回の作品は、そういう偶然っぽさではなくて、背景にある導かれるべき運命を明示しているところが、まあ違うといえば違う。いずれにしろ、盤上の登場人物たちが理不尽な出来事の連続に翻弄されることはかわりがない。私は、個人的には伊坂作品の登場人物にはあまりなりたくないと思う。主役級であればあるほどなりたくない。胃に穴があきそうだもの。
父母の性格の極端さには若干動揺するところがあった。ここをクローズアップして、教訓めいた結論を引き出すならば、「極端な子育ては極端な結末を生む」ということだろう。
ということは、主人公は不幸だったのか。いや、そうとも言えない。
確かに不思議な読後感を残しつつ、私としては結構面白く読めましたが、マクベスをきちんと読んでいないので、この本の本歌というか、コアの部分を楽しめていない可能性はある。
マクベスを読み直してから、もう一回読もう。
マクベスを読むという新たな扉をあけるきっかけになるのであれば、この本のもう一つの効用と言えるだろう。