半熟三昧(Half-boiled doctorのアウトプット Blog)

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山本七平『一下級将校の見た帝国陸軍』

一下級将校の見た帝国陸軍 (文春文庫)

一下級将校の見た帝国陸軍 (文春文庫)


 イザヤ・ベンダサンの変名で『日本人とユダヤ人』を書いて売れ、本多勝一と喧嘩をしたりしたことでおなじみの山本七平が、自己の体験を元に日本軍の「体質」を回想した本。

 なんて憂鬱な本であるか。
 陸軍の体質は、今、組織の中に生きる我々の抱える問題そのままである。鉄拳制裁とかはないものの、年次主義や員数主義などは、過去に属したことのある数々の組織でも、程度の差こそあれ、同じ様な粉塗は見たものだ。
 企業、大学・中学・高校の部活などにおいても、いやむしろ、特殊な原理原則なしに日本人の形成した集団では、これらの問題が必ず発生すると覚悟しておくべきなのだろう。
 我々はそのことに対し無自覚過ぎ、ゆえに、陸軍でいうと、敗戦直前、のような状態になると、バーサークせざるを得なくなってしまうのだ。
 集団に過度に肩入れし過ぎると、負け戦に置いてひどい目に遭う。しかし、勝ち戦だからといって、集団に埋没するのもアンフェアな振る舞いではある。しかも、集団に肩入れをしすぎない、ほどよさというのも難しい。
 集団に帰属しない場合は「シラケ主義」「個人主義」という言葉で括られるような態度しかステレオタイプがない。もうちょっと緩やかな紐帯というものが得られれることが理想なのだと思うが、批判精神を忘れないようにするには、一体どうすればいいんだろうか。

ちなみに姉妹編として:

(以前の感想>http://d.hatena.ne.jp/hanjukudoctor/20040617
マクロ経営学から見た太平洋戦争 (PHP新書)

マクロ経営学から見た太平洋戦争 (PHP新書)

(以前の感想>http://d.hatena.ne.jp/hanjukudoctor/20050923
の二つは、僕の書棚にもありますが、大変興味深い本だと思います。


 最近尖閣諸島の件で、国論が揺れております。はっきり言えることは、現在の日本には、日中戦争前夜以上に、戦略というものがないということです。
 受験で失敗して浪人して、同じ試験を受ける時にはさ、さすがに、同じ失敗は繰り返さないものじゃない?けど、70年ほど間に挟んでいるものの、同様の局面でよく歴史から学ばないものだなあと思う。

 「経済大国」とか「自衛隊の能力は高い」とか、そういうことを我々はやすやすと信じるということは、日中戦争前の、日の丸降っていた国民と、ほとんど進歩していないと思う。まあ、大衆というものは学習をしないものではあるが。