半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

: 菊地成孔,大谷能生『M/D マイルス・デューイ・デイヴィスIII世研究』

M/D マイルス・デューイ・デイヴィスIII世研究

M/D マイルス・デューイ・デイヴィスIII世研究

一週間の出張があったのですが、初日に買ってきて、昼は仕事、夜はホテルでこの本(と仕事)。
仕事の邪魔しまくり、という意味では買わない方がよかったなあ。

『憂鬱と官能を教えた学校』『東京大学アルバート・アイラー』に続く、ジャズ理論史の系譜(というか、このシリーズ自体が、大谷氏と菊地氏がエレクトリック・マイルスの分析をしたことがきっかけで始まっているので、むしろ系譜というよりはルーツなのかもしれない)。
 マイルスの個人史とその研究。

 彼らが取り組んでいる「ポスト・モダンの視点からジャズ史を再構築する」というコンセプトは、ポスト団塊世代のジャズファンの直面している問題に対して、非常に明快な回答であり、それゆえに菊地氏をスターダムに押し上げたと言ってもいいでしょう。

 ところで、自分はジャズファンの中では、いわゆる「まっとうなジャズおやじ文化」(ジャズ喫茶主導、ハードバップ至上主義というか)で育った人間ですので、菊地氏らのジャズ史観に接した当初は相当なカルチャーショックを受けたわけですが、イマドキのジャズ研の子達は、むしろ菊地史観がスタンダードなんでしょうか?
いや、プレーヤーでそこまで深く考えていたら吹けねえ、という気もするし、そこまで考えて、ジャズという蛸壺にはまりこんでしかもベイシーとかやる矛盾を説明できないし。 でも、みんなどう折り合いをつけているんでしょうか?

 4700円と高額なのはともかく
(Hahaha! No Problem! I....'m rich man! ←スネークマンショーで)
 ブロックのような厚い装丁は、単純にちょっと読みにくい。
 でも確かにマイルスですから、圧倒的な情報量になるのはしゃあないよね。でももうちょっと大判で薄い方がありがたいかなあと思います。大体この人達の本は変形版過ぎるのである。

 内容に関しては期待以上でした。
 特に電気マイルス以降については、特に日本ではあまり評価も検証もされていないので、非常に新鮮でした。
 また、ポップ・アイコンとしてのマイルス像というのも、普段CD/LPを聴いているだけではわからないことですから、これまた面白い。
 でも、また買わなければいけないCDが増えた…

 そういえば、この3月で"Kind Of Blue"から 50年なんですよね。
 例えばへっぽこアマチュアジャズマンとして、自分が "Kind Of Blue"より後のジャズに踏み込めているかというと、殆ど踏み込めていないわけですよ。50年前の革命も未だに乗り越えられない…