半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

銃・病原菌・鉄

スゴ本にて取り上げられていたのが縁で、アマゾンで注文。

 しかしこれ、上下巻をまとめて注文したのですが、下巻は速やかにとどいたのに対し、上巻は2ヶ月待っても届かなかったんです。どうやらAmazonが在庫を切らしていたようで、キャンセルして、Market Placeの中古屋にて上巻を改めて注文。

ネットの中で、注目を集めると、ネットの中でも品薄になる、ということでしょうか。そんなわけで下巻を先に読み始め、しかも上下巻の間に2ヶ月のタイムラグがあるという、へんな感じで読む羽目になりました。

 ちなみにその間リアル書店でこの本を探したかというと、家の近くにこの本がおいてありそうな書店がなかったので断念しておりました。子持ちには書店でじっくりお目当ての本を探す時間はようあらしまへんのや。

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 本文中にもありましたが、この本を荒っぽく要約すると
「諸民族の発達にはいろいろな段階があるが、それは人種の優劣のために生じたわけではなく、それぞれの種族の置かれたさまざまな地理条件による」
というもの。ま、そりゃそうだ。
 しかし要約してしまうと一言ですが、そうやってざっくりまとめるのが惜しいくらい面白い。

 比較民俗学を推し進めたらこうなるのかと思うのですが、地球規模の普遍人類学、とでもいうような本。
 文明の発展や衝突の中で、普遍的な要素を抽出する。個々の歴史よりも「人類史」のようなもの、そして人類史そのものではく、このような人類史が描かれるのに至った根本の要因を解き明かそうという態度で、ワクワクしますよね、知的に。

 僕はアイザック・アシモフが大好きな訳ですが ファウンデーションシリーズにでてくるハリ・セルダンいうところの「心理歴史学」に似ているような気がします。

心理歴史学(サイコ・ヒストリー)
社会的、経済的刺激に対して、人間集団の反応を扱う数学の一分野。個々の人間の行動を完全に予測することはできないが、膨大な人間の集団は、一定の確率統計的な蓋然性に基づいて振舞うことが予想され、その人間集団については外的条件などの変数によって趨勢を推測することが可能である。
心理歴史学による未来予測が可能かどうかは、以下の3点が重要視される。
・個人ではなく膨大な集団を扱うこと
・人間が気体分子のようにランダムに行動すること(心理歴史学による予測について知らないまま行動していること)
・扱う集団が人類のみで構成されていること

 ま、一言でいっちゃうと、中心極限定理ですよね。しかし、コンセプト的にはこういう、人類史上の人間の行動を実験箱の中の動物の行動をみるのと同じレベルで見る(ま、それが科学的にみる、ということなんですけれども)わけですよ。

 とはいえ、この手の 「地球史」といえるような本は、今までもいくつか読んでいたわけで、そういう本と組み合わせて読むと、より一層理解が進むように思いました。

 ちなみにこの本の切り口は、「地政学」。大陸の地理的条件と、そこからどのように社会が発展してゆくか、そのように条件が異なる二つの文明が出合った際に、どちらが優位であるかということに、力点が置かれています。「ヨーロッパ人が世界を征服することができたのは、ユーラシア大陸が横長やったからや」え?意味がわからない?それでは読んでみてください。