- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/05/15
- メディア: 文庫
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Mariさんがちょっと前紹介していましたけれども(→幻想の断片)、僕も駅の本屋に平積みされていたので、時間つぶしの意味で買ったクチです。伊坂幸太朗、そんなにはっきりと好きという意識はないんですけれども気が付くと結構読んでますね。
これは、5編の連作短編集。
連作短編集っていうのは、ちょっと起承転結がはっきりしているドラマ仕立てのCDのような感じですな。
陣内という、ちょっと濃い人物が軸になっています。
自分は大学生時代に軽音というクラブに所属しておりまして、「濃い」人達には事欠かない環境でした(陣内的人物は幸いなことに(?)僕の友人にはいませんでしたが)。しかし、濃い人物と一緒にいると、そこで自分の凡人性を思い知るわけです。なんか、そういう気持ちを久々に思い出しました。
陣内は、瞬発力だけで生きているようにも見えました。そういう人物のそういう行動を目の当たりにすると、ちょっと格好いいなと思ったりもしますが、後になって冷静に考えるとそうでもないもんです。
小説としてはうまい作りだなーと、いつもながら思うわけです。しかし、伊坂氏のうまさというのは、なんでしょうか。
なんか、うまい人のビリヤードとでもといいましょうか。玉がぶつかり、それがさらにぶつかって、盤面がめまぐるしくかわり、気が付くとポケットに玉が入っている。玉と玉のぶつかりのように、出来事が連鎖していくところに、彼のプロッティングの特徴がありそうです。
これは、彼が現実世界をどのようにみているのか、そして現実世界のどういう面に興味を抱いているか、ということの裏返しなんでしょうけれども。
ルーブ・ゴールドバーグマシン*1的世界観といいますか。
この短編集は、初期配置の違う5つのビリヤードの盤面をみているようでした。
長考して慎重にキューを突く、カチ・カチ・カチ。ポケット。そして、別の初期配置。長考して慎重にキューを突く、カチ・カチ・カチ。ポケット。
伊坂氏に対して僕が感じる「うまいなー」感は、そういううまさです。