- 作者: 最相葉月
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/08/28
- メディア: 文庫
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で、次にこれを買ってみたわけだ。星新一も好きだし。高校生の時とか、良く読んだ。
うーん、でもこの本はあまりいただけないです。僕的には。煮こみの足りないシチューを味わっている感じがしました。なんか薄いのよ。
筆者が何の目的で星新一をテーマにあげているのがよくわからない。そもそも星新一は、冗長でもないし、難解でもないので、読み解く余地も少ないのだ。ダビンチ・コードとは違う。それに、星新一にはとにかく大量に作品があるから、現代の皮相的なテーマに沿ったものを探してくるのも、それほど難しい作業ではないように思える。
僕が期待したのは、そういった現代の諸問題をテーマにして、そういうショートショートを次から次へ取り上げて、そのショートショートの中から浮かび上がる星新一の思想が透けて見えやしないかなということでした。いや、まぁ、そう書くとまさにそういう風な作り方をしているんですけれども、惜しむらくは、一つのトピックに対して取り上げる話しが少なすぎること。作品としては膨大な数があるわけだから、もっともっと挙げて、重層的な章立てに出来るとおもうんだけれども、二、三編ずつとかで、それこそ紹介の域を出ないんです。ま、しかし、ショートショートで、作者の意向を尊重しようとするとオチもそんなに書けないし(結構ネタバレさせてますけど)、かなり難しい企画のような気はします。
それとも、若い読者に紹介?星新一って、もうそんなに埋もれちゃって忘却の彼方の作家になっちゃっているんでしょうか?
最大の問題は、星新一が書いた本編を引用している部分と、ストーリーを説明したあらすじだけを彼女が説明した部分の違いが、あまりないことだ。こうしてみると星新一は、本当にミニマリズムだったんだなあと思う。
あ、でも挿絵はかわいいです。つい買ってしまったのは、桜玉吉『渡る世間にメガトンパンチ』のラルフ一家的未来挿絵のせいです。メカなのにちょっと丸っこくてかわいい。