- 作者: 小川洋子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1991/02
- メディア: ハードカバー
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芥川受賞作だったんですね。読んでから知りました。
姉とその夫と暮らす妹。姉が妊娠する。妊娠によって姉と、姉を取り巻く世界が随分変わってしまう、その否応なしの変化を不気味に、しかし静かに綴るお話。
確かに妊娠・出産って、ピンク色、ばら色的なイメージの付与をなされるけれど、一歩ひいて考えたら不気味だし理不尽でもある。逆にいうと、生に向き合うときついから、ポジティブな社会的価値付けをされているわけだし。
この人は不気味さを書かせると上手だよなぁと改めて思う。初めて読んだのは『寡黙な死骸 みだらな弔い』だったが、それと同様のひんやりとした触感を感じた。ベストセラーになった『博士の愛した数式』とかは、プロット的にはなんかべたべたでお涙頂戴の甘い話になりがちなのに、そうはならず、奇妙な冷静さを保っており、結果的に奥行きを与えているのに成功しているのは、根底にこういう作風があるからかもしれない。