半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

恩田陸『夜のピクニック』

夜のピクニック (新潮文庫)

夜のピクニック (新潮文庫)

 ええと、映画化されるかなんかで、どこの本屋にも大量に平積みされているものを買ってきたやつを横から読む。

 いやぁ、いい読後感でした。

 まずなにより、人が死なないのがいい。最近の売れる本とか泣ける本は、登場人物の死とかそういうのが過剰過ぎるような気がしていたから、こういう風に、誰も死なない、当たり前の情景の中に感動があると、ちょっとほっとします。

 自分は男子校だったので、こういう甘酸っぱいイベントとは無縁の学生生活でしたから、これに100%懐かしさを感じられるかというと、そうではないと言わざるを得ません。生まれ変わったら絶対共学に入学してやろうと常々思っていたのですが、しかしこの小説でも、男同士、女同士の友情というものが非常に大きな価値が置かれている。むしろ「レンアイ」至上主義者のようなキャラクターも出てくるのですが、作者及び登場人物に冷淡に扱われています。
 だからむしろあの頃の同性間の友情というものを懐かしく思いだしました。そうだよ、あの頃は、レンアイなんて全然無かったけど、心からの友人達が居たんだ。僕にも、確かに心から友達といえる友達がいたんだ。

一つ残念な点があるとすると、主人公が三年生なせいで、同級生同士の人間関係ばかりであること。高校時代の人間関係って、先輩後輩のがかなり大きなファクターを占めていたと思うんですよ。
 僕は中高一貫校だったので、中学一年の時の高校二年の先輩から高二の時の中一まで結構幅のある年齢差の友人(といっていいものかどうか)に恵まれたので、そういうのがこの小説ではカットされていてちょっと残念。とはいえ、確かに同学年の友達は格別であると思うけれども。