現代日本の軍事に関する構造的な問題をとりあげた本。
・「戦力」と「実力」「実力行使」
・「政軍関係」と「統帥権」
のあたりがキーワード。
日本の軍事に関する論壇はやや特殊で、イデオロギーのフィルターがかかっており、ポジショントークの傾向が多分にある。
この本は軍事の視点からできるだけフラットに状況を著述しようとしているように見える*1。その意味で、文章はやや固めで密度が高く、どちらかというと論文形式に近い。「ざっくりいうと」みたいなまとめが全くなく、アホの人を全く寄せ付けないソリッドな文が続く。1時間で読めるようなビジネス書に慣れてしまうと、実に読みにくい(笑)
「戦力不保持」という憲法第九条二項が、自動的に日本の安全を保障してくれるわけではない。
憲法9条による軍備の制限と、現実の折り合いをどうつけるか、というのが戦後日本のテーゼであるわけだが、そこに至るまでの経緯と、現実的な法のあり方が、かなり細かいレベルで説明されており、非常に有意義だった。
戦前は軍がいかに政治から干渉されないように頑張った結果、逆に軍部の独立、暴走を許してしまった。
戦後はその反省からか、軍の独立性を極力なくして自律性を喪失させているのが特徴だ。しかしその割には法整備が憲法9条のタブーで進まない。そのため諸外国でのスタンダードとされるような「シビリアンコントロール」がそもそもできない。法律のピットフォールが多々存在するため有事を想定することさえできない。
結局自衛隊が「タブー」であるがゆえに法整備もすすまないというのが戦後の桎梏である。かといって、湾岸戦争以来、海外派兵も全くしないという選択肢もないことがわかってしまった(今の経済的繁栄のなかで人的な国際貢献を全くしないのはフリーライダーと謗られても仕方がないのだ)その意味で八方塞がり。
安倍さんが憲法改正憲法改正といっていたのもまあわかる気はするよな。
多分現場の実務家は本当に途方にくれているんだと思うから。
ただ、彼は自らの行動と言動で、それを動かすことはできなかった。
あと一歩だったのに。残念っすね。
参考:
この辺のダブルバインドは、かわぐちかいじの漫画では繰り返し語られていることだ。
別に大して教養がなくても、この分野に一家言ある人が多いのは、この漫画家の功績が多分にあるだろう。
漫画ってやっぱ圧倒的なわかりやすさで、人々を説得できると思うね。
戦前の軍のいろいろな構造的な問題に関しては、読んだ中ではこの辺か。
(これはBlogには書いていないが、色々参考になる話が多い古典的名著である)halfboileddoc.hatenablog.com
halfboileddoc.hatenablog.com
halfboileddoc.hatenablog.com
halfboileddoc.hatenablog.com
戦後自衛隊の問題については、あまり読んでいないが、こんなところか。
halfboileddoc.hatenablog.com
halfboileddoc.hatenablog.com
以下、個人的なノート。