半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『バカと付き合うな』堀江貴文・西野亮廣

バカとつき合うな

バカとつき合うな

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バカとつき合うな

バカとつき合うな

挑発的なタイトルがついているけれど、うん、いい本です。

なんか、ネガティブなことが書いてあるようなタイトルだが、全く逆。
世の中にいるバカ(いろんな類型をあげている)の言うことを真に受けないで、自分で考えて行動しようぜ!という
極めてポジティブなメッセージである。

世界の変化はものすごく大きい。世の中の常識というものも、ものすごい勢いで変化しているのに、大多数の人は自分の経験を盲信して、新たなことに対しては思考停止を決め込む。特に内に閉じた日本の社会では、こういう人がかなり多い。
ホリエモン・西野氏の両氏がいずれにしろ嫌うのはこういうタイプの旧来勢力=バカのいうことは聞くな!
、というのが彼らのメッセージである。

そういう意味ではある種の痛快性がある。


しかし後半は「ぐだぐだ考えていないで、バカになってとりあえずやってみようぜ!」
みたいなメッセージ。
はては、堀江は西野のことを、西野は堀江のことを「こいつは、こういうところがすごい、バカだな〜」という評価になり、
バカが、どちらかというといい意味で語られる文脈になって、
最終的には「俺もお前もバカになろうぜ!」みたいな感じになる。

うん、めっちゃいいこと言っているけど「バカ」という言葉の使い方、ブレてません?
最後まで読んで、タイトルに戻ったら、若干「?」「?」となる。

でもまあ「多動力」を始めとして堀江氏のここ数年の一連の著作は、時代の変曲点において極めて重要なメッセージを発していると思うし、
西野氏も堀江氏も、既成概念にとらわれず、自分の頭で考えて自分のスタイルを作り上げている。
メッセージこそが重要だ。
素直にきくと、いいことが一杯書いてある。

スピンオフ作品 北斗の拳とドラゴンボールと

Kindle版はコチラ。

なんとなくKindleでおすすめされて購入。
80-90年代のジャンプ黄金時代の金字塔『北斗の拳』、そのスピンオフ作品。
拳王軍にたまたま入隊したふつーの村人がみたものは……。

ええと、はい。大体予想通り。
1ミリたりとも予想を裏切らないやつです。
どうかなー。2巻が出たとして、買うだろうか。アーカイブに入れていて、読み返すかなー*1

読み味としては、同じく悪役側の日常を書いたものとして『中間管理録トネガワ』に近い。

中間管理録トネガワ(1) (ヤングマガジンコミックス)

中間管理録トネガワ(1) (ヤングマガジンコミックス)

読み味が似ているのは、多分シチュエーションコメディっぽい感じと、大いなるマンネリズムで、そのマンネリが、いい意味で天丼っぽく作用してそこはかとなく面白いところだろう。

ちなみに同時期のジャンプ黄金時代の『ドラゴンボール』にも
転生したらヤムチャだった件』というのがある。

(Kindle版)これはきちんとストーリーが進むタイプのやつだった。

これら一連の作品は、敵方には敵方の事情があるし、主人公以外の立場をもっと忖度しようよという風にも読み取れる。つまりは文化相対主義のようなものか。
そう思うと、懐が深い話のようでもあるが、そういう崇高な感じでもなくて、
いわゆる同人誌の二次創作が商業誌に進出してきた、というのが正直なところだろう。

右手で卓球していたけど、飽きて左手で卓球したら、意外と楽しめた、という風にも見える。

しかし我々、過去のすばらしいコンテンツに縛られすぎていないか。
確かに一時代前のジャンプ黄金時代のコンテンツは今も色あせず燦然と輝いている。
それのパロディも、別に悪かない。
僕だって嬉しい。

だけど、他国、アジア北米ヨーロッパで、今、未来に向かって新しいなにかを生み出そうとしているクリエイターに比べると、どうしても「それでいいのか」という思いもする。

しかし楽しんでおいてそういうことをいう僕も、いかがなものか。
若い風俗嬢に説教するオヤジ程度に見苦しい。

*1:しかし北斗の拳スピンオフは、『北斗の拳 イチゴ味』というのがあるんですね。また読みます。

『天才はあきらめた』山里亮太

天才はあきらめた (朝日文庫)

天才はあきらめた (朝日文庫)

Kindle版はコチラ
天才はあきらめた (朝日文庫)

天才はあきらめた (朝日文庫)

南海キャンディーズの山ちゃんこと山里亮太の自伝的なエッセイ。
この前読んでた『ナナメの夕暮れ』若林正恭 - 半熟三昧(Half-boiled doctorのアウトプット Blog)に少し類縁する作品といえる。


いろいろヤバい。

まず、山里亮太の執念深さがヤバい。
くすぶっていた時代。ある種の「デスノート」とでも言えるネタ帳に、自分が屈辱を感じた他人の一言一言を書きとめて、嫉妬の炎に燃料をくべる毎日。今回この本では過去のノートへの書付も、惜しみなく公開されているのだが、もう怨念がヤバい。
山ちゃん、芸への道を貫徹するために、人気者になる道への退路を断っている感じがヤバい。
完全にヒール(悪役)やん。

山里の努力のベクトルがやばい。
センスのなさを努力で補う。
そのスタイルは自嘲しているものの、ツッコミの言葉のチョイスなどについては妥協なくトライアルエラーを繰り返している。
M-1に最初にでてブレイクする直前には、一つのコントで一冊まるまるネタ帳を作り直したそうで。
その妥協のなさはヤバい。
それが現在の芸風の安定感につながっているんだろう。積み重ねってものはやはり裏切らない。

山里の「才能のなさ」に対するコンプレックスがやばい。
関東から関西の大学に行き、関西お笑いの層の厚さにめげそうになりながら、頑張る山ちゃん。
だが、基本的に面白さの地力が、自分にはないよな…ということを自覚する。
自覚しつつ、それでも持っているカードで勝負するしかない!という悲壮感。

この本で、山里亮太は、自分の悪いところも包み隠さず(びっくりするほど)さらけ出している。
過去二つのコンビを、同じような理由で解散させ、しずちゃんにも懲りずに同じ態度でコンビの状態が悪くなり、怯懦な性格ゆえに同じ失敗を繰り返すことを自己弁護なく書いている様は、かなりイタいが、一番の読みどころである。

ただ、自分で筆をとった部分を読むとただのクソ野郎にしかみえないが、マネージャーにしろしずちゃんにしろ、彼の味方をし、ついてきてくれる人は沢山いる。
叙述トリックといいますか、クソな部分、惰弱な部分を拡大して書いているんだろうなと、最後の若林の解説を読んで腑に落ちた。

『蚤と爆弾』吉村昭

蚤と爆弾 (文春文庫)

蚤と爆弾 (文春文庫)

Kindle版はコチラ。Kindleの日替わりセールが最近一日3冊になり、日によっては追いつかないですね。
蚤と爆弾 (文春文庫)

蚤と爆弾 (文春文庫)

吉村昭の一連の戦争ものを、初めに読んだのは、『戦艦武蔵』だったかと思う。
司馬遼太郎が、人物に強くフォーカスしたストーリー運びであるとすれば、吉村さんの作風は一幅の風景画のよう。
ある瞬間の光景・風景を徹底的に写実する。
特定の人物にも、事物にも過度に肩入れせず、淡々と筆が進み、デッサンは一分の狂いもない…とびっきり優秀な風景画家のような感じだ。

ま、しかし、戦争ものに関して言えば、深く静かに怒っている感じはする。


今回のこの作品は、満州にある関東軍細菌兵器開発に携わった曾根二郎を中心に物語が展開する。
とは言え、曾根二郎というのは、『不毛地帯』の壱岐正が瀬島龍三であるかの如く、曾根二郎は石井四郎。
石井部隊と悪名高い731細菌部隊と聞けば知っている人もいるだろう。

スパイや民間中国人を「マルタ」と称した実験材料とし、ペストや壊疽などの医学実験標本とするくだりは、胸糞わるくなること請け合い。
そして学術論文での公開に際しては「満州猿」という言葉を使っていたという、これも胸糞の悪さ。

終戦間際に、研究所を封鎖し、中の実験標本を証拠隠滅のため皆殺しにして、満州国から各自が内地に帰る。
帰国した後ももと研究員達は、二度と自分たちがお日様の下を堂々と歩けないことに気づき、自分たちの出自をあかせない後ろ暗い人生を送った。

しかし当の石井四郎は、針の振り切れたマッドサイエンティストらしく、アメリカが石井の実験結果を求めていると聞けば
「当然だろう。あれは優秀な実験なのだから。医学の名のもとには平等だ。アメリカが使おうが、大日本帝国が使おうが、科学的事実が正しく使われるのには、何の問題もない」と、
その行動論理はある種突き抜けた倫理観で、呆れるとともに、あっぱれでもある。
少なくともブレはない。絶対に友達にはなりたくないが。



余談だが、最近朝ドラで、憲兵隊が主人公安藤百福を拷問したみたいな話を、ネトウヨの人たちが「自虐史観も大概にしろ」とかいうんですけど、
蚤と爆弾の石井舞台だって、南京大虐殺だって、数量の多寡の問題はあるとは言え、僕はあったと思う。

ないわけないじゃん。今の日本だって、たとえば大企業のリストラ部屋とかで行われている仕打ちとか、大学紛争のときの内ゲバとか、そういう時に見せる日本人の行動の延長線上に、治安維持法発令時代の憲兵とかおるわけですよ。拷問とか、しないと思う方が不思議で、むしろその当時の憲兵に失礼な話やないかとさえ思う。日本人は勤勉だから、職務に忠実に自白を強いたら、そりゃ拷問にもなるでしょう。

別に、拷問を肯定しているわけではないですよ。逆に欧米や中国韓国が人道的だったとは思わない。
似たり寄ったりでみんなクソ。
クソみたいな世界で生きているんだと思う。
今は暴力が比較的減った時代に生きている我々は幸せだと思うよ。
スポーツ関係の「パワハラ」が取り沙汰されているわけですが、50年前なら「コーチの暴力」が問題にされることもなかったわけだから。

ラブラブエイリアン 岡村星

Kindle版:
ラブラブエイリアン 4

ラブラブエイリアン 4

ラブラブエイリアン 1

ラブラブエイリアン 1

ラブラブエイリアン 3

ラブラブエイリアン 3

ラブラブエイリアン 2

ラブラブエイリアン 2

Amazonをウロウロしていたらなんとなく発見。Kindleで購入。

私は男だが、姉と妹がいるからか、女性と話をしている方が落ち着く。*1
男子と天下国家を論ずるなんてつまらない。女性と話をしている方が楽しい。
洋の東西を問わず女子会とかガールズトークというのに、自分が加われないのがとても恨めしいと思っている。

非常に上質のガールズトークが楽しめる作品である。

…いいか女共
もうくだらないお喋りは終わりだ

今日やらせる奴だけここに残れ

「本音光線」(宇宙人が発する)を浴びて始める、本音同士の合コンも、面白かった。


作画は、これ少女漫画の絵柄なんですかね?描線はかなりかっちりしているので、既存の少女漫画っぽくないようには思いましたが、よくわかりません。Akira 大友克洋的な描線でもあるとも思うが。江口寿史が描くクラスのきれいな女子が沢山でてきてとてもよかった。
ドラマ僕みたことないので、一度みてみよう。Amazon Primeにはないようなので。
宇宙人も毒舌でもありつつ、かわいくもあり、楽しい。

作中世界がイキイキとしてキャラクターが生きている感じがあって、とてもいいのですが、
読み味としてはなぜか「Be-Bop Highschool」にとても近い。

登場人物が「ギャハハハ」とか「ブハハハ」とか笑うからかなあ。

*1:いやそれオメー兄弟関係ないだろ?という意見もある?ごもっとも。

読書という荒野 見城徹

読書という荒野 (NewsPicks Book)

読書という荒野 (NewsPicks Book)

Kindle版はコチラ
読書という荒野 (NewsPicks Book)

読書という荒野 (NewsPicks Book)

まだ取り上げてませんが箕輪さんの「死ぬこと以外かすり傷」は僕も読みました。
その箕輪さんが手がけた幻冬舎の見城さんの自伝的な著書がこれ。

見城氏の生い立ちのエピソードを踏まえて熱い人生指南が語られるので、説得力がある。
親が飲んだくれで自分もかっこよくもないコンプレックスから、反骨心あふれる若者時代。
吉本隆明の詩集に傾倒した学生時代。
惚れ込んだ作家を徹底的にラブコールを送り担当編集者としてヒットを飛ばした編集者時代。
ただし、村上春樹には敬遠されたそうで。
無理もない。見城氏のスタイルは村上春樹とは相容れないと思う。とは言え、見城氏も春樹をくさすのではなく、すばらしいが縁がなかったとフェアなコメントを残している。

「自己検証・自己嫌悪・自己否定の3つがなければ人は進歩しない」
書経験を重ねた人間は一度は左翼にかぶれる。思想が純化され、現実の人や社会が汚れて見えて仕方がないから。

僕も多分苦手なタイプの人だけど(多分「圧がすごい」タイプだと思うから)、すごい人なんだなあと思った。
本当に本が好きなんだなと思う。だから紹介されている本、何冊か読みたくなったものもある。
うん、いい本です。

死ぬこと以外かすり傷

死ぬこと以外かすり傷

見城徹氏は角川春樹の下について影響を受け、箕輪氏は見城氏の下で影響を受けている。

【相棒 Season 17】初回拡大スペシャル『ボディ』

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ええと、相棒シーズン17が始まるにあたって、杉下右京こと水谷豊さんが劇中で掛けている「Lindberg」のメガネを掛けておりました。
相棒記念。
一般の方向けの講演会とかあったんですけど「趣味はメガネ集めで、今日は『相棒』の杉下右京と同じ眼鏡です」みたいな事言うたら、つかみはOKでしたよ。

このLindbergシリーズ、韓国の大統領や、国会議員の宮沢洋一先生も掛けている。まあ軽くて曲がりにくくてかけやすいんです。

こんだけの熱量をみせておきながら、僕は実は『相棒』そんなに好きじゃない。うちの妻が好きでよく観ていたので、観るようにはなりました。*1
杉下右京はイギリス駐在経験もあるエリートの出自で、紅茶をこよなく愛し、服はブリティッシュ・トラッド*2

対して「相棒」の現相棒である冠城亘こと反町隆史は、すらりと背が高くほどよく鍛えた体型。体の線のでるドロップの大きそうなスーツ(でも大方ノータイ)。対して杉下さんはボックスシェイプで必ずタイドアップ。ブレがありません。

歴代相棒(初代はボマージャケット・ブルゾン愛用、及川光博はモード系、成宮寛貴はジレ多用)のファッションの中で、今の反町が一番しっくりきますね。私も背格好とか年齢とかからすると、冠城亘よりは杉下右京側にいるんでしょうけど、どちらかといえば、反町のチャラついたスーツに憧れます。 
かっこいいわー。鍛えた人のダークスーツ。
青木年男はどうでもいいです。

え?ストーリー?
別に……

なんか大杉漣もだけど、出る人が結構変わりましたね。
反町隆史はだいぶ相棒役も馴染んできましたけど、いろいろうまいなと思いました。
ちゃらけた感じはあぶない刑事の柴田恭兵を彷彿とさせますけど。
柄本さんか…すんげーえらい人で、ぼそぼそ喋る人、リアルにもいますよね。

*1:夫婦での見解は水谷豊は『稀代の大根役者』。役にはすごくはまっていると思いますが、「何やっても水谷豊」感はキムタクに迫る。主役級ってそんなもんかもしれませんけどね。

*2:そのわりにメガネはベルギーやないかいといツッコミはさておき